東京ありがた記

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Arigataki is written in Tokyo.

oasis『Be Here Now』がリリースされた世界の片隅で

 

【大ニュース】oasisのNEWシングル、1997年7月7日、全世界同時発売決定!!

2ndアルバム(What's the Story) Morning Glory?でロックンロールの天下を獲ったoasisご一行。

そして新作への期待が極限まで沸騰していた真っ只中に先行シングル『D' You Know What I Mean?』発売の知らせ。

oasisファンとしてはとにかく来たる7月7日は何が何でもレコ屋に駆けつけなければなりません。

なぜなら

oasisの新作を発売日当日に買った!」

という事実が何よりの誇であり最高の自慢のネタだったからに他なりません。

『Be Here Now』鑑賞の流儀

90年代末の若者たちにとって音楽雑誌は貴重な情報源でした。

当然oasisみたいな大物バンドは各紙がこぞって特集しますから私たちは例えoasisに関する記事が数行しかなかったとしても貪るように読みまくるのです。

そして3rdアルバム『Be Here Now』が発売される直前にはアルバム全曲紙上レビュー特集が組まれます。

oasisファンはこの時までに先行シングル『D' You Know What I Mean?』を聴きまくっている状態です。

そのサウンドを手がかりに、特集記事を読みながら一曲ずつイメージを膨らませていきます。

言ってみれば字面だけで音楽を聴いてるのです。

そしてついに『Be Here Now』発売日当日がやってくるのです。

ここで当時の聴きたい音楽を聴くまでの工程を振り返ってみましょう。

レコード屋に出向く

当時の私たちはレコードショップの店頭でCDを買うことが最もスタンダードでした。

私も東京御茶ノ水にあったレコード店で購入したはずです。

店頭には『Be Here Now』のポスターや店員手書きのPOPがド派手に飾ってありみんなでoasis祭りを盛り上げている雰囲気。

そして実物のCDを手に取って、赤いベスパ、プールに沈んでいるロールスロイス、そして「AUGUST 21 THURSDAY」の古時計をじっと見つめるのでした。

開封の儀

新品のCDはお菓子の箱みたいに薄いビニールに包まれていて剥がす手間がかかりますが当時はこの開封の義を当たり前のようにしていたものです。

③ミニコンポ派かCDラジカセ派か

ケースからCDを取り出してミニコンポにセット。プレイ。

キュルキュルキュルッとCDが回転し始めると聞こえてきたこの音はヘリコプターのプロペラ音のようです。

oasisは私たちを迎えに来たかと思うとその凶暴なヘリコプターに中に叩き込まれます。

そしてまるで日本の右翼の街宣車のように激烈な轟音を絶え間なく鳴らしながらラストの『All Around The World』まで強制連行されるのです。

さらにアルバムの最後にわざわざAll Around The World』の「リプライズ」が用意されていて、ビートルズみたいなおみやげつき。

もうオレたちのoasisのおもてなしがすごいのなんの。

『Be Here Now』と日本人の蜜月関係

『BE HERE NOW』で起こったoasisバブル。

しかし空前の期待値でリリースされたこのアルバムの売り上げは前作に及ばなかったそうです。

しかしそれは欧米での話。

oasisのことが大好きな日本では話が違います。

もうバカみたいに売れまくりました。

当時日本の音楽業界は活況で日本のレコード会社は金をかけて強力なマーケティングを打つことができました。

その効果が如実に出たのがきっと『Be Here Now』案件だったんでしょう。

だとしたら当時のoasisとレコード会社のいったいらどちらがすごいのやら?

それでも私はこのアルバムが好きです。

なぜなら当時のoasisの空気が丸ごとパッケージされているからです。

ロックの玉座に行儀悪く座ってるような慢心にもほどがある時期のoasisです。

そういった尊大な雰囲気が今でもアルバムの隅々から立ち込めてきます。

しかし何度も聴いているうちに分厚いサウンドに覆われてわからなかった曲の良さに気づいてくるのです。

例えば『Don't go away』

3rdアルバム中屈指の名曲だと思います。

この曲がどんな曲かを例えるなら、暴風雨のまっただ中に駆け込んだ時の小屋のような存在といえましょうか。

とにかくめちゃくちゃ安心する心の避難場所のような曲です。

そして美しい。

こんな曲もこっそり用意されているのもoasisのおもてなしということでひとつよろしくおねがいします。

 
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