『彼岸花』 物語の片隅に咲く色を探す。

小津安二郎監督の『彼岸花』は秋の実りのように豊潤な作品だ。 タイトルの彼岸花は9月の中頃になるとそこかしこに咲き始める。真っ赤な花弁が目印だ。小津映画を始めてカラーで堪能できる。特に彼岸花のような鮮烈な赤が印象的だ。

f:id:ikenohatazo:20200502161453j:image

──主な登場人物

 

f:id:ikenohatazo:20200502161753p:image
──物語の始まりは東京駅舎の赤煉瓦から。東京駅は当時の新婚旅行の出発点。ひまな駅員が花嫁の品定めをしている無駄口トークがよい。後年のタランティーノ映画によく見る。

 

f:id:ikenohatazo:20200502161830p:image
──友人の娘の結婚式散会後に飲み直す初老の紳士三人組み。 礼服の黒が画面を圧迫している中で、左隅に置かれた赤いとっくりと、床の間の桔梗(?)が和ませる。

 

f:id:ikenohatazo:20200502161904p:image
──父の自宅。手前の赤いヤカンと奥の白磁の花器が人物の登場を静かに待つ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502161930p:image
──帰宅する上の娘。例の赤いヤカンが迎える。白いショルダーバックに手袋。ショートカットの健康的なスタイルは“ビジネスガール“のお手本だ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162012j:image
──京都から訪ねてきた料亭の娘。やはり赤いヤカンが迎える。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162043p:image
──着物の帯と椅子の毛布が外の光を反射している。赤がことのほか明るい。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162106p:image
──訪問の目的は“東京のおじさま“に相談があるため。帯の赤と呼応するのは、敢えての干されたセーター。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162124p:image

──恋人のアパートを訪ねる上の娘。 彼女の白いバックと恋人の白いトレーナーが呼応している。ところが右隅の椅子にかかる毛布はなぜか赤と白だ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162148p:image

──父、会社の若い社員と、バー「ルナ」にて。赤電話、ランプシェードなど赤がいっぱい。マダムのカンザシの飾り玉も赤だ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162219p:image

──父哀愁の図。暗い背広の背中を赤い扉と唐辛子の瓶が挟む。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162257p:image

──物語の折り返し地点。白磁の花器の影が濃くなっている。そして赤いヤカンのそばには黄色い湯呑みが。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162322p:image

──赤いラジオから流れる長唄を聴きながら拍子をとるご機嫌な母。赤いヤカンは縁側の方へ移動している。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162352p:image

──上の娘の結婚話でもめる夫婦。お互いの短所を言い争う。帰ってきた下の娘は姉を支持。赤いカバンがその気持ちを表しているようだ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162431p:image

f:id:ikenohatazo:20200502162505p:image

──結婚前夜。女性だけのパーティーの様子。赤いヤカンも参加。いつもより目立つ。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162529j:image

──ブドウの皮をむく母。それにしても浦野理一の染織りが可愛らしい。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162557p:image

──下の娘の服装と赤いヤカンで画面を赤が占める。帰宅した父は買物した小包を背広から出した。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162613p:image

──京都のお節介ガール。最後のお節介中。御召し物は浦野理一の染織。落ち着いた紺色から赤い裏地がのぞく。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162637p:image

──その連絡を受ける母。画面の中のすべてが直線的に整っている風景は果てしなく美しい。小さな赤がポツンポツンと散らされている。

 

f:id:ikenohatazo:20200502162701p:image

──父が乗る特急列車のシート。奥には車掌か。結婚した上の娘夫婦が暮らす街に向かう車内だ。物語の最後は白に覆われていた。《おわり》

▼Amazonプライムビデオ無料体験ありf:id:ikenohatazo:20200516211557j:image