小津映画が大好きな、ありがた記管理人(氷河期世代)です。
「今を生きる氷河期世代のための小津映画鑑賞法シリーズ」のお時間です。
第一回目は、『秋刀魚の味』(1962)です。
まずはじめにこの記事はこちらのコラムに触発されて書いたものです。
≫【内田樹】小津安二郎が男たちに送る「大人になれよ」というひそかなメッセージ
これによると、 小津安二郎は『秋刀魚の味』で日本の男たちの幼児性を容赦なく描いている
といいます。
さらに、 女性たちは男たちの幼児性の犠牲者だ
と怖ろしい考察をしています。
私はどきっとしました。
なぜって、私も日本の男だからです。
『秋刀魚の味』の男たちを見習うな
小津安二郎が描く男たちの幼児性とはどういうものなのでしょうか?
さっそく『秋刀魚の味』の男たちを見ていきましょう。
- 料亭の女将にセクハラ発言をしてからかう
- 学歴、勤務先マウンティング
- 妙齢の娘に対して唐突に結婚話を切り込む
- ゴルフクラブを買うのを妻に反対されて拗ねて黙り込む
- 正気を失うまで酒を呑む
一見どれもこれも昭和の男たちのあるあるのように思えますが、今でも周りにこんな人いません?(私はよく拗ねて黙り込みます)
いますよね!?
つまり、日本の男たちの幼児性は『秋刀魚の味』の頃から(あるいはもっとずっと前から)温存され再生産され続けているんですよ。
そしてついにパンデミック下において、日本の男たちの幼児性もパンデミックしちゃってます。
すでに老年期の男たちはうまく逃げ切れるでしょう。
しかし私たち氷河期世代はそうはいきません。
このまま幼児性を抱えたまま老人になってしまったら、女性だけでなく若者も犠牲者にしてしまうかもしれません。
『秋刀魚の味』の"ひょうたん案件"
ありがたいことに、小津安二郎は日本の男たちが「大人」になるための手がかりも示してくれているみたいです。
それは、 大人の素養を併せ持つこだ
と。
それがこちらです。
- 甘えない
- 威張らない
- 親切に
- 正直に
- はつらつと
『秋刀魚の味』では、それらの一部がが見て取れるシーンも少しだけありますので、紹介しましょう。
男たちは同窓会で元教師(ひょうたん)をもてなします。
ひょうたんはあだ名ですが、本人の前ではちゃんと先生と呼んで敬意をもって接しています。
それで気分をよくしたひょうたんは、前後不覚になるまで泥酔します。
帰る方向がいっしょだった男のひとりがひょうたんをわざわざ家まで送り届けます。
そしてひょうたんの自宅での出来事がその後の物語を動かすトリガーになるのですが、この時はひょうたんの無事を確認してから辞去します。
後日ひょうたんの生活を憐れんだ男たちはひょうたんにお金を渡ことにしたのです。
ひょうたんの自尊心を傷つけまいという配慮も忘れていませんでした。
まあ、あの時代だったらそれでよかったのでしょう。
しかし氷河期世代は、このような振る舞いを目上の人だけではなく、若い世代にもできなくてはなりません。
ただでさえ政府にとっては冷や飯を喰わしておいてもいいことになっている氷河期世代が、さらに若い世代からも相手にされなくなるというのはとてもまずいことです。
もはや女性や若い世代から嫌われないことは氷河期世代の男たちの生存戦略です。
本シリーズはそんな問題意識が根底にあります。
合言葉は、先達の振り見て我振り直せ。