東京ありがた記

東京ありがた記

Arigataki is written in Tokyo.

ジョンレノンの魂を箱根、軽井沢、そして東京で感じた時の話

ジョンレノンの魂を日本でスパークさせたもの

ジョンレノンとオノヨーコ 夫妻は日本の色んなところに足跡を残しています。

例えば箱根や軽井沢のクラシックホテル。

今でもジョンレノン一家が滞在したお部屋には泊まれることができますし、ジョンさんがレシピを教えたというミルクティが名物になっています。

付近の古い写真館には一家のポートレイが飾ってあったりします。

この有名なリゾート地で感じられるのは家庭人としてのジョンさんの存在です。

では本業であるアーティス、ジョンレノンの魂を感じれる場所はというと東京です。

東京の湯島天神の近くに一軒の古美術店にその足跡がありました。

私がこの古美術屋を訪れた際、女将さんがジョンさんとヨーコさんのエピソードを話してくれましま。

その日は1971年1月のこと。

何の前触れもなくジョンさんとヨーコさんのふたりが突然店を訪ねてきたというのです。

当時の店主であるお父さんはジョンレノンを知らなかったそうです。

お父さんは、目についた書画について質問しては次々と買い求めるジョンさんの様子を見てこう思ったそうです。

 とんでもない目利きか、とんでもないバカ。

その時ジョンさんの買ったものを紹介しておきましょう。

白隠慧鶴 、仙崖義梵、室井其角 、松尾芭蕉、などなど

 日本美術好きなら誰もが憧れるラインナップです。

ジョンさんは特に松尾芭蕉の短冊を買えたのがうれしくてずっと抱きかかえていたといいます。

“ふるいけや かわづとびこむ みずのおと“の句だったそうですが、側にいたヨーコさんはどんな風に訳してみせたのでしょうか?

多分ジョンさんは買い求めた書画がいったい誰のものかなんて知らなかったことでしょう。

それにもかかわらず夢中になって買い求めたのはなぜなのか? 

お父さんはこう言っていたといいます。

ジョンレノンはモノを目で見る人でなくて、心で魂で見る人だから。ジョンレノンには分かるんだね。

ジョンレノンの魂は歌舞伎座で泣いた

 

お父さんはその後ジョンさんたちを歌舞伎座に連れていったそうです。

着いた頃にはすでに「隅田川」という演目が始まっていました。

お父さんとしては、これぞ歌舞伎という派手な演目を見せたかったのですが、タイミングが悪いこにとても陰気な場面に出くわしたそう。

お父さんにしてみれば当てが外れたわけです。

ところがジョンさんの方を見ると涙を止めどなく流しているのです。

側でヨーコさんはジョンさんの涙をハンカチで拭き取っています。

その姿を見てお父さんは思いました。

 ふたりの心は一心同体なんだね 

ジョンレノンは現代アーティストのオノヨーコに大きな影響を受けたことは有名な事実です。

ジョンさんはあらゆる美の本質を見抜くことを理解したお父さんは言います。

 オノヨーコがジョンレノンを培ったんだね。 

この話のおもしろいところは、お父さんはジョン・レノンオノ・ヨーコ(そしてビートルズも)を知らなかったのに書画を通じて心の交流ができてしまったことです。

それはジョン・レノンとファン、つまり、ひとり対大勢という関係性では到底不可能なコミュニケーションです。

ところが美の本質が分かるもの同士はあっという間に深い相互理解ができてしまうことを証明しています。

人と人は何でつながるのか?

自分は人と何でつながりたいのか?

その何かを私たちは選べるのです。

そんなことに思いながら聴く『ジョンの魂』はまた格別だったりするのです。