東京ありがた記

東京ありがた記

Arigataki is written in Tokyo.

小津映画を観て考えた本当に安心できる東京の防犯とは?

ある日のニュース。都心のタワマンに配達業者を装った音が30代女性宅に侵入、現金600万円を奪ったというのです。

これまでタワマンは高額だから防犯も万全だろうというエンドユーザーの思い込みと、タワマンは防犯が万全だから高額で売れるという業者側のマーケティングによって構築されてきた両者の都合のいい前提が覆された一件でした。

 

無料の防犯システムを発見

ところで、私の住むマンションは都心の築50年以上の2DK物件です。(ほんとは今年、二度目のオリンピックを迎えるはずだった)タワマンに比べたら防犯の備えなんてないも同然だと思っていました。だがしかし例のニュースを聞いた時、私はとてもとても大切なことに気づきましま。実はうちのマンションにはタワマンにはない独自の防犯システムがあったのです。

私のマンションの敷地の隣には高校のグラウンドがあります。体育の授業とか部活とか体育祭とか年がら年中若者たちと先生らの雄叫び、悲鳴、怒号、警笛が発生しています。近隣住民の立場からすると迷惑だとずっと思っていました。

でも防犯の視点から考えるとその捉え方がガラッと変わってくるから不思議ですね。どういうことかというと、若者が騒がしくしていることによって自宅が衆人環視下の環境になっているのです。そんなとこで強盗なんてする気になるでしょうか?それよりもっと“ 仕事“のしやすい他の物件を当たるはずです。

今回の事件でタワマンは受付さえ突破してしまえば個人宅へのアクセスは案外容易だということが実証されてしまいました。その受付にしても配達員だということであればほぼスルーだったことでしょう。ところがうちのマンションの目の前は学校のグラウンドです。

今日も朝から晩まで若者が監視してくれています(というふうに思うようにしている) 。こんなにありがたいことはありません。

60年前の東京には驚くべき防犯効果があった

さて、ここで話は一気に60年くらい遡ります。当時の東京でも新築の分譲戸建てが供給されていたエリアがあったようです。

小津安二郎監督『お早よう』は新しい住宅地にいわば他所者同士の家族が居を構え、新しいコミュニティが形成されます。そのうち住民はローカルルールや暗黙のルールに従った生活を余儀なくされていく模様が描かれています。

このとても息苦しいとも思えるコミュニティですが強みもあります。侵入者の排除機能がすごい。それは何かと言うと異質なものに浴びせられる人の目です。

先に触れた私の自宅マンションも人の目を防犯に利用しています。偶然にも映画の公開当時と私の自宅マンションの築年はほぼ同時代です。この60年も前からある衆人監視防犯とタワマンの防犯システム、どちらが優れていると言えるでしょうか?

以上です。